Research Activities
Instrumentation
光赤外線による天文観測用観測装置の開発 (ソフトウエア), および開発した装置をもちいた観測的研究をしています. 2016 年から東京大学木曽観測所で開発している広視野高速 CMOS カメラ Tomo-e Gozen (トモエゴゼン) の開発を担当してきました. 取得したデータを自動で解析するシステムや観測を自動で実行するシステムの設計開発も担当しました. Tomo-e Gozen は 2019 年 10 月に運用を開始して, 多くの科学成果をあげています.
Tomo-e Gozen の開発については以下のページを参照してください.
また, 東京大学アタカマ天文台第一期観測装置 MIMIZUKU の開発にも参加しています.
Planetary Nebulae
太陽のような中小質量星はその生涯の末期に惑星状星雲と呼ばれる天体になると考えられています. 惑星状星雲とは AGB1 期に放出した自身のガスやその中で作られた固体微粒子 (ダスト) を高温の中心星が照らすことで明るく輝く天体です. 放出した物質は宇宙空間に還元され次世代の星の材料となります. 銀河が化学的にどのような進化をたどるのかを知る上で惑星状星雲の星周物質は重要な情報をもたらしてくれます.
これまで, すばる望遠鏡の中間赤外線観測装置 COMICS2 や赤外線観測衛星「あかり」をもちいて, 惑星状星雲に存在する星周ダストの性質について研究してきました. 研究の詳細については以下のページを参照してください.
Solar System
Tomo-e Gozen による動画掃天観測によって, 宇宙空間を高速で移動する天体を網羅的に観測することができるようになりました. 東京大学木曽観測所では地球接近小惑星3の観測に取り組んでいます. 直径が小さい4小惑星は, より大きな小惑星の基本構成要素として重要な情報を保持していると考えられます. 微小な小惑星は十分に地球に接近しなければ暗すぎて発見することできません. 一方で, 接近して明るくなった天体は見かけの速度が大きくなるため観測が難しくなります.
直径が 100 m を下回るような微小な小惑星は, 小惑星が地球-月間の距離程度まで近づかなければ 1 m 級の望遠鏡で発見することはできません. こうした小惑星の見かけの速さは典型的に 1″/s 程度に相当します.
Tomo-e Gozen による動画観測ではこうした高速移動天体を効率よく観測できます. 高速移動天体を効率よく抽出するためのアルゴリズムを開発して, 微小な地球接近小惑星を数多く発見してきました. 研究の詳細については以下のページを参照してください.
Data Analysis
データ解析はすべての実験科学を支える礎です. 分野によってデータの形式や量は違うものの, 得られたデータからノイズとなる成分を除去し, 科学的な情報を抽出する操作は共通しています. 可視光や近赤外線の観測では観測装置の発展に伴って, 全天を網羅的に監視し続けるような計画が現実的になりつつあります. 研究者の判断能力を超える量の観測データが得られるようになりました. 天文学の画像データはコントラストが高く, 殆どの領域はノイズに支配されているという特徴があります. また, 観測天文学ではサンプリング不均質であったりや打ち切りデータとならざるを得ないことも多々あります. 観測装置特有のノイズや特殊な測定量を適切に処理することが必須となります.
Tomo-e Gozen による動画観測や地上中間赤外線観測では一回の観測で膨大なデータを取得することになります. このデータをいかに高速に解析するか, また誰もが解析しやすい環境を整えることを目指してソフトウエアの開発をおこなっています. これまでに開発した解析ソフトウエアの情報は以下のページを参照してください.
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Asymptotic Giant Branch (漸近巨星分枝) の略です. ↩
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COMICS は 2020 年 7 月に惜しまれながらも運用を停止しました. ↩
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地球の軌道と近い軌道をもつ小惑星の総称です. 近日点距離が 1.3 au よりも短い小惑星として定義されます. ↩
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直径がおよそ 200 m よりも小さい小惑星には高速自転している天体も多く, 一枚岩の小惑星であると考えられています. よりサイズの大きな天体は自らの重力によって岩塊があつまったラブルパイル構造を持ちます. ↩