Planetary Nebulae
惑星状星雲 (planetary nebula) は太陽のような中小質量星1の進化した姿です. 主系列星のうちは水素を燃焼させて輝いていますが, 中心の水素を使い果たすと巨星へと進化します. 漸近巨星分枝星になると激しい脈動運動とともに周囲に物質を撒き散らします. その後, 中心のコアは収縮して高温になり高速の星風と強烈な紫外線を放出するようになります. この星風が周囲の物質を掃き集め, 紫外線によって照らされた姿が惑星状星雲です. 星間物質から形成された星が星間物質へと還っていく最後の瞬間にあたります.
惑星状星雲は星周物質と星間物質のはざまのような天体です. 恒星から星間空間にどのような物質が供給されているのかを理解するうえで, 惑星状星雲の観測は重要です. また, 強烈な紫外線環境で物質がどのような変化を受けるのかを調べる実験室という側面もあります.
私は赤外線分光観測をもちいて, 惑星状星雲に含まれる炭素質ダスト, 特に多環芳香族炭化水素 (polycyclic aromatic hydrocarbons, PAHs) の放射を調べてきました. PAH の放射の強さや空間分布から, 星の進化に伴うダストの変化と, ダストを照らす紫外線の影響を理解することを目指しています.
Self-consistent Emission-line Diagnostics
分光観測から星雲の物理状態を調べるための解析手法にも取り組んでいます. 共同研究 Ueta & Ohsawa (2026) では, 減光補正と輝線診断を一体化し, 電子温度・電子密度・減光のパラメタを自己無撞着に推定する手法を提案しました.
- Self-consistent Emission-line Diagnostics with Integrated Extinction Correction (Ueta & Ohsawa 2026)
AKARI/IRC Galactic PNe NIR spectra
多くの惑星状星雲を共通の観測条件で比較するためのスペクトルカタログを作成しました. Ohsawa et al. (2016) では, 「あかり」衛星の IRC で取得した銀河系内の 72 個の惑星状星雲の近赤外線スペクトルをまとめています.
波長範囲は \(2.5\)–\(5.0\,\mu\mathrm{m}\) で, 水素の再結合線や \(3.3\)–\(3.5\,\mu\mathrm{m}\) の炭化水素の放射を含みます. スペクトルフィッティングによって放射の強度や等価幅を測定し, 天体ごとの性質を比較できる形に整理しました. このカタログは, 惑星状星雲のガスと炭素質ダストを統計的に調べるための基礎データとなります.
Spectroscopy of PN G095.2+00.7 with Subaru/COMICS
若い惑星状星雲 PN G095.2+00.7 を対象に, 「あかり」衛星の IRC, Spitzer 衛星の IRS, すばる望遠鏡の COMICS による近・中間赤外線観測を組み合わせて, 炭素質ダストの放射を調べました (Ohsawa et al. 2012).
COMICS による空間分解した分光観測から, 波長 \(12\,\mu\mathrm{m}\) 付近の幅広い放射が殻状に分布する一方で, \(11.3\,\mu\mathrm{m}\) の PAH 放射が星雲の南側で強くなることを示しました. この違いは, ダストの化学的な変化を仮定しなくても, PAH を励起する紫外線の届き方の違いで説明できます. 星雲自身による紫外線の吸収を考慮することが, ダストの放射スペクトルを理解するうえで重要だと提案しました.
-
およそ \(8M_\odot\) 以下の天体を指します. ↩